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ナナシスアドベントカレンダー企画用の特設ブログになります。

7度目の春、六咲コニーにまつわるエトセトラ

人は、花を見ると美しいと感じます。

植物は人間のために花を咲かせているわけではありませんし、
花は人間の生存にとってどうしても必要なものでもありません。

だから、そこには何の合理的な意味も無いのです。

それでも、人は花を見ると癒されますし、
時には『生き方』や『生きる力』すら感じ取ることができます。

人はそれを、『愛』と呼ぶのです。


七咲ニコルという少女が『六咲コニー』という生き方を選んで歩んできた7年は、
打算的でも、論理的でもなく『誰かの背中を押す』その姿は、
ナナシスが描き続けた『愛』の物語だったと、私は思います。

ナナシス7周年と茂木伸太朗氏の退陣に寄せて、
私が一番好きなアイドル、コニーさんの背中を追いかけていきます。



1. 失った一片の花弁

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六咲コニーは元々、七咲ニコルでした。

人が名前を変えたり、偽ったりするのは、
『違う生き方を始める』ための誓いのようなものです。

この少女を語るにあたり、
先ずは『どうして七咲ニコルじゃなくなったの?』という切り口から物語を見ていきます。

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私は後悔しない日なんてなかったッ!!
本当は毎日、今だってずっと後悔してる。

だけど、ナナスタのみんなに会えて、
ハルちゃんに会えて!!

自分が選んだ道を、
自分たちが選んだ道を、
ようやく後悔してないと思えるようになったッ!!

そしたら、
あのとき見えてたまっすぐな光が、
もう一度見えたような気がしたんだ……ッ

エピソード『最後の授業』、
前へ進めなくなったハルへ言葉を伝えた彼女は、
自身の『後悔』について語ります。

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私ね……ずっと君に、隠してたことがあったんだ。

ずっと……自分のことが嫌いだった。

求められて、期待に応えようとして……
でも、なんにもできなくて……

代わりに、大切なものを、少しずつ失って。

自分じゃない誰かに、なれればいいなって。

続く場面、AXiSとのライブ対決の舞台袖では、
彼女が自分のことが嫌いで、他の誰かになりたかったとも語っています。

この後悔と胸に秘めてきた想いこそが、
七咲ニコルが六咲コニーになったきっかけでした。



2. 雪と愛

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彼女の選んだ道と後悔、
それは、かつて自身が『セブンスシスターズの解散を選んだこと』です。

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自らの輝きをもって笑顔を届けていた『アイドル』という在り方を捨てることは、
多くの誰かが信じていたものを裏切る道でした。

それは作中で『呪い』とまで言い表され、
アイドルシーンには氷河期が訪れることとなります。

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目に映るすべてを、自分の手で救い上げることは誰だって出来ません。

七咲ニコルはそんな壁に何度も何度もぶつかった果てに、
1つの選択をしました。

それは『笑顔』、親友である羽生田ミトの笑顔こそが、
『アイドル』を捨ててでも、彼女が選んだ道でした。

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自分という存在を許せない程の後悔を携えて、
七咲ニコルは『愛』に気付くことが出来ました。

大切な誰かの傍に居られなくても、
それでも、その人が明日を歩いて行けるような、
その人の心の内で『背中を押す』ものを、
彼女は『愛』と呼んだのです。

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閑話休題
『六花』という言葉は『雪の結晶』を表します。

EP 0.7のサブタイトルが『それは 凍える雪の中でさえ溶けてしまうほどの"愛"』で、
七咲ニコルではない生き方として、『六咲』を選んだのも偶然だったかもしれませんが、

愛に気付いた彼女の名前が、雪の中でも咲く花のイメージと重なるのは面白いと思います。

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3. アイドルじゃなくても

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彼女がジャーマネ『六咲コニー』としてナナスタを訪れる2034年
ナナシスという作品が始まります。

「アイドルなんてだいっきらい!」
彼女が最初に出会った女の子、春日部ハルはそんなことを言っていました。

アイドルだった頃の自分が許せないハルの姿は、コニーの心中とも重なります。

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だからこそ、エピソードで彼女がハルにかけた言葉は、同じ目線で見えていたものであり、
自分自身への問いかけでもありました。

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『アイドルはアイドルじゃなくてもいい』

彼女にとって、この言葉はアイドルじゃない今の自分を肯定する言葉だったのでしょうか。

それとも、七咲ニコルという過去を肯定する言葉だったのでしょうか。

きっと、この時点でのコニーはその答えを持っていませんでした。

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だから、ハルに『アイドルを辞めた理由』を問われても、
七咲ニコルは自分じゃないからと、自分自身を誤魔化してしまいます。

『本当の自分』のままではいられなかった女の子、
それが六咲コニーのスタートラインでした。



4. その勇気は奇跡じゃない

『伝説のアイドル』として六咲コニーが何かを教える場面は、
作中を通して出てきません。

『キミはなにがしたい?』という問いかけで、
ひとりひとりの女の子に向き合うのがコニーの教え方です。

そんな彼女の背中を見て成長していったナナスタシスターズの中に、
角森ロナという少女が居ました。

セブンスシスターズに、七咲ニコルに憧れていたロナは、
彼女のようになりたい、という想いをきっかけにアイドルになりました。

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角森ロナの物語は『変わること』を軸に描かれます。

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弱虫な自分を変えたい、逃げ出したくない、
最初の想いは、他の誰でもなく七咲ニコルから受け取ったものです。

そんな彼女が六咲コニーと共に歩んで見つけた答えは、
『自分自身を信じること』でした。

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別の誰かになるのではなく、
ありのままの自分を認めて、変わろうとする。

それは、2年前のあの時『六咲コニー』になった彼女には選べなかった道です。

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変わるのに必要なのは、勇気だけ。

それはきっと、六咲コニーにとっても同じでした。



5. アイドル

AXiSと対峙した2035年の夏、
六咲コニーは『七咲ニコル』と向き合う時が来ます。

勝者だけが輝き、敗者は消えていく、
エンタメ世界の残酷な『現実』は、
七咲ニコルだった頃の自分が見てきた景色です。

セブンスシスターズを解散して別の誰かになろうとした彼女にとって、
それは『逃げ出した記憶』でもありました。

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誰かの笑顔のために選んだアイドルという過去が、
自分が笑えなくなる『壁』となって彼女の歩みを留めます。

それはまるで、彼女が初めて出会った頃の春日部ハルの姿を見ているようです。

そして、春日部ハルがそうであったように、
コニーがもう一度前に進めるきっかけを与えたのも『アイドル』でした。

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ニコルがミトにそうしたように、
コニーがシスターズにそうしたように、
『涙を隠しながら誰かを応援する』
ナナシスが7年間ずっと描き続けてきた『アイドル』の姿が、そこにありました。

ニコルでもなく、コニーでもなく、
『自分自身』がしたいと思ったことが、
自分の背中を押してくれたのです。

『君は、君でいい』
それこそが、彼女が自分と向き合うために必要な、
最後のピースでした。



6. 愛と呼ぶ

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支配人との最後の会話で、
彼女は自分のことを『七咲』と呼びます。

一番大切な自分を信じることが出来た彼女は、
本当の意味で『七咲ニコル』になったのです。

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心の内に『背中を押す』ものがあれば、
大切な誰かの傍に居られなくても、
それでも、明日を歩いて行けるのだと、
ネロの手を掴んだ彼女は叫びます。

もしかすると、彼女はネロにかつての自分を重ねているのかもしれません。

だからこの言葉は、
大切な仲間たちと別れ、親友の背中を押したときに気付いたものが、
彼女の心の中で溶けないものとなったことの証しで、

人はそれを、『愛』と呼びます。

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絶対無敵なんかじゃない、ひとりの女の子から始まった物語は、ナナシスが描く『愛』の物語でもありました。

相手が自分の人生と関係のない他人であることを知りつつ、それでも胸を張って応援するとき、そこに『愛』はあります。

それは、ファンがアイドルに、アイドルがファンにしていることと同じです。

あとがき

こんばんは、ぷろめてです。

↓ 一Dさん(@ichi__dai)に企画いただいたナナシスアドベントカレンダーの1日目として、記事を書かせてもらいました。

十人十色なコンテンツでナナシスの7周年を祝う予定ですので、
毎日チェックしてもらえれば嬉しいです。



さて、今回の企画に参加させてもらうことになったのは、1か月くらい前のことです。

『六咲コニー』という女の子のことを書くのは、自分にとって1番大きな題材でしたし、
7年という節目に自分が出せる一番好きな話でした。

その一方で、コニーを語る上で欠かせない『愛』というものの有り様を言葉にするのは、
多分人生で一番時間がかかったようにも思います。

正直なところ1週間くらい前まで、『愛』を説明する言葉は1文字も書けませんでした。

どんな辞書にも、恋愛作品にも見当たらなかったこの言葉は、
不思議なことに今年の桜前線のニュースを見ていたときに、ふと思い至りました。

誰かの為に咲いているわけじゃない桜のことをニュースにするくらいに、
人は花を愛していたのだと。

花のようになりたいと願った777☆Sの気持ちが、少しだけ分かった気がしました。

そういえば、茂木さんも毎年欠かさず桜を見に行くようにしてるなんて話を、どこかで聞いたようにも思います。


誰かを応援したい、誰かの光になりたいという想いが巡り巡って自分の背中を押してくれる。

ナナシスが描く『愛』は、この上なく美しいです。

その姿に勇気をもらったファンの一人として、
ナナシスの7周年に少しばかりの花が添えられたなら嬉しいです。

それでは、またあした!